MASUtorix

MASUtrix

『ツナガッテマス。』『ドウシマス?』MASUtrixー2010年制作/阿部由布子・芝山昌也

” 東アジア人たる我々にとって、「マス」は特別なツールである。「マス」とは一定の容積を表す方形の器を指し、古来、税などの徴収または給付において測量のために役立てられてきた。
 ひとは「マス」を基準に測量単位を定め、これを用いて物事の価値を測量する文化を形成してきたから、「マス」は東アジア地域における最古のマトリックスのひとつであると見る向きもある。日本人は酒の器としても「マス」を用いるが、そこには常に例のマトリックスの存在が暗示される。
 ひとは太古の昔から、<他者>の本性を暴くために酒の力を借りてきた。日本人が「マス」に酒を注ぐとき、その向こうにはいつも、あられもない<他者>の姿がある。
 ともすれば我々は忘却しがちだが、<他者>もまた「マス」を挟んで、こちらの真価を量ろうとしているのに相違ない。
 この作品は我々に、そうした現実をあらためて認識させる。

 大きな「マス」の中で接待を受け、気を良くしていた<わたし>は、数分後、その姿が<他者>の手のなかの小さな「マス」に投影され、酒の肴にされていた事実をつきつけられる。
我々はこの≪マストリックス≫から、どうすれば逃れられるのだろうか?”(ハイブリッド2カタログより)